オリンピック予選を兼ねたAFC U-23選手権。16カ国を4つの組に分け行われたグループリーグで、中国は開催国カタールと同じA組に、日本と朝鮮民主主義人民共和国(以降、朝鮮)はグループB。韓国はこの世代の強豪国として知られるイラク、ウズベキスタンがいる最も厳しいグループCとなった。
中国は開幕日にカタールと対戦。10 MFリャオ・リシェンの鮮やかな直接FKで幸先良く先制した中国だったが、開催国の力強い攻撃を止めきれずに3失点を喫して初戦を落とすと、続くシリア戦でも再び10 MFリャオ・リシェンが先制ゴールを決めたが、PKで同点とされるとさらに2点を失って敗れた。
イラン戦では先制点を許したものの、中国の持ち味であるサイド攻撃を展開。19 MFチャン・フェイヤの鮮やかなシュートで同点に追い付いた。しかし、そこから守備の隙を突かれる形で2点を奪われる。終盤にPKで1点差とするも、イランの粘り強い守備をこじ開けることができず3連敗。ここ数年、育成年代の強化に取り組んでいる中国だけに、選手個々の能力は高く、決して中東3カ国に圧倒されたわけではなかったが、集中力と勝負強さに今後の課題を残した。
日本と朝鮮は初戦でいきなり激突。2014年のAFC U-19選手権では準々決勝でPK戦を朝鮮が制して勝ち上がるなど、因縁の深いカードと言えたが、開始5分にCKを5 DF植田直通が合わせ、先制点を奪った日本が朝鮮の鋭い攻撃に耐えて1 - 0で逃げ切った。
次戦のタイ戦では、手倉森監督のプランにより初戦から6人の先発を入れ替え。序盤こそタイのテクニカルな攻撃に苦しんだが、次第にペースを掴むと攻撃を畳みかけて4 - 0と大勝。朝鮮vsサウジアラビアが3 - 3の引き分けに終わったため、3試合目を待たずにグループ首位通過を決めた。サウジアラビア戦でも大きく先発メンバーを変更しながら2 – 1で勝利した日本は良い流れで準々決勝に臨むこととなった。
2戦目でサウジアラビアと激闘を演じた朝鮮はグループリーグ突破をかけタイ戦に臨んだ。9 MFキム・ヨンイルのヘディングシュートとセットプレーからの14 MFユン・イルグァンのボレーシュートで2度のリードを奪ったが、サイドを破られ2 - 2の引き分け。しかし、サウジアラビアが日本に敗れたため2位で準々決勝に進出した。
準々決勝で開催国カタールと対戦した朝鮮は開始3分に3 DFホン・ジンソンが相手を倒し、PKで先制される苦しい展開となったが、結束した守備で“タレント軍団”カタールに追加点を与えることなく再三カウンターを仕掛ける。後半のアディショナルタイムに20 MFソ・キョンジンが左斜めの角度から見事な直接FKを決め延長戦へ。ところが延長前半開始早々に鮮やかな速攻から守備を崩され再び勝ち越されると、反撃も及ばず幕を閉じた。持ち前の組織力をベースとしながら、カウンターだけでなく正確なパスも目立った朝鮮。
本来のエースだったパク・ヒョンイルの欠場は痛かったが、2得点を決めた9 MFキム・ヨンイルなど楽しみなタレントも出てきた。5 DFチャン・ククチョルなどすでにA代表の主力を担う選手もいるが、今回のメンバーからさらにA代表に定着する選手は増えるだろう。
B組を首位通過した日本は準々決勝でイランと激しい攻防を繰り広げる。長いパスから縦の突破を狙うイランに対し、日本は2トップのポストプレーから左の10 MF中島翔哉が果敢に仕掛けたがゴールを決められず。
ややイランが優勢な状態ながら0 - 0のまま延長戦に突入したが、運動量に勝る日本は96分に12 DF室屋成のクロスに途中出場の14 FW豊川雄太が合わせ、ついに先制。これで流れを掴んだ日本は延長後半にも10 MF中島翔哉が立て続けにスペクタクルなミドルシュートを決め、終わってみれば3 - 0の大勝となった。
オリンピックの出場がかかる準決勝の相手はイラク。同世代の過去の対戦で何度も敗れてきた相手に挑んだ日本はコンタクトプレーで劣勢を強いられたものの、一瞬の隙を突く形で9 FW鈴木武蔵の突破から11 FW久保裕也がDFラインの間から抜け出し、ゴールを奪った。しかし、43分にCKのこぼれ球を合わせられ同点とされた。
その後はお互いチャンスを決められず、延長戦に入るかと思われたアディショナルタイムにGKの弾いたボールを拾った7 MF原川力が豪快なミドルシュートを決め、決勝進出と同時にオリンピック出場権を手に入れた。
C組の韓国は成長著しいウズベキスタンを相手に初戦からタフな試合を強いられたが、やや幸運なハンドでPKを獲得。これを7 MFムン・チャンジンが冷静に決めると、さらに鋭いサイド突破からのクロスに7 MFムン・チャンジンが合わせて2点目。
1点を返されたものの、相手の退場に助けられる形で逃げ切り、勝ち点3を獲得した。
続くイエメン戦で5得点を記録して大勝した韓国は同じく2勝しているイラクと3試合目で引き分けたものの、得失点差で韓国が首位通過となった。
準々決勝の対戦相手はヨルダン。D組を粘り強く勝ち上がったチームを相手に苦しい時間帯もあったが、23分に7 MFムン・チャンジンが決めた1点を守り切って準決勝に進出した。
開催国カタールとオリンピック出場権をかけた試合はロングパスに反応した10 MFリュウ・スンウが飛び出す相手GKの裏にボールを流し込み先制するも、連戦の疲労からか終盤には足をつる選手が続出。カタールに同点ゴールを決められ、さらに逆転されてもおかしくないピンチを受けたが、カウンターからのチャンスに、6人がゴール前に攻め上がる起死回生の攻撃を22 MFクォン・チャンフンがものにする形で勝ち越すと、さらにカタールの裏を突いて7 MFムン・チャンジンが3点目。
シン・テヨン監督の率いるチームは高い技術をベーストするチームだが、ギリギリの戦いで伝統的な強さを発揮して8大会連続となるオリンピック出場を決めた。
日本と韓国による決勝はプライドをかけた戦いが期待されたが、後半途中まで韓国が日本を支配する展開に。22 MFクォン・チャンフンの大会5得点目となるゴールで先制し、日本が4 – 4 – 2から4 – 3 – 3にシステムを変更した後半にも、18 FWシン・ソンウクが追加点をあげ、勝負の大勢は決したかに思われた。
しかし、そこから切り札である俊速16 FW浅野拓磨を投入して反撃にでた日本は、67分に21 MF矢島慎也のパスにタイミング良く抜け出した浅野が合わせて1点を返すと、1分後には6 DF山中亮輔のクロスに今度は21 MF矢島慎也が頭で合わせて同点。そして迎えた81分にカウンターから韓国の中途半端なクリアを10 MF中島翔哉が拾い、その間にDFラインを破った16 FW浅野拓磨が1 GKキム・ドンジュンとの1対1を冷静に制して逆転ゴール。劇的な勝利でアジア制覇を成し遂げた。
優勝した日本は大会前から評価が高かったわけではないが、事前キャンプからチームとしてまとまりを強め、試合ごとに多くのメンバーを入れ替え“日替わりヒーロー”が現れる形で6試合を戦い抜いた。決勝で敗れた韓国もタレント力では過去の代表チームを下回るとの声も聞こえていたが、大会を通じて技術の高さとコンビネーションを見せながら、要所で勝負強さを発揮した。
決勝では明暗が分かれたEAFFメンバーの両国だが、ここから半年間でさらに成長し、3位決定戦でオリンピックの切符を掴んだイラクとともにアジアの代表として躍進を目指すことが期待される。